漢方薬は効果があるの?漢方医学の基礎知識とメリット

漢方とは「伝統的な東洋医学全体」を指しており、私たちが一般的に思い浮かべる「漢方薬」は湯液(とうえき)のことです。この他にも、針灸、養生、按摩・マッサージ、気功、座禅などがあります。いわゆる漢方薬とは、化学的に合成した化合物ではなく天然の植物、動物、鉱物などを原料とした薬剤(生薬)をいくつか組み合わせています。複数の生薬を組み合わせることによりできるだけ副作用を減らし、さらに有効性を高めるメリットがあります。

西洋医学は合成された単一成分の医薬品を用い、効き目が高い反面、副作用もあり一長一短なところがあります。現在では西洋医学が主流となりましたが、合成された医薬品の安全面や手術に頼る医学が万能ではないという意識が高まり、病気の予防や身体の調和などの効果が見直されています。

 

伝統的な東洋医学

漢方(伝統的な東洋医学)にはさまざまな種類があります。

  • 湯液(漢方薬)
  • 針灸
  • 養生
  • 按摩・マッサージ
  • 気功・座禅

 

漢方薬は天然の植物、動物、鉱物などを原料とした複数の薬剤(生薬)を用いた医療で、針灸は外科的な役割を担っています。養生は食養とも言われ、日頃の食事やライフスタイルのことを指します。按摩・マッサージは身体を正常にし、気功や座禅の基本は呼吸です。気功や座禅はヨガ(古代インド発祥)とも似ており、心を整えるセルフ・コントロールの一種と考えることができます。

 

・漢方医学の基本的な考え方

漢方医学では液体生理学、液体病理学と言われる「気・血・水」という考え方があります。

・気=人間を生かしているエネルギーで目には見えないもの(病は気から)

・血=血液のこと

・水=体液、分泌液、尿、浸出液など

 

漢方医学で病気は「気・血・水」の異常で起こるという考えです。例えば、血の不足している状態を血虚(けつきょ)と言い貧血のことを指します。反対に血実(けつじつ)は血液が多すぎて充血している状態です。

そのほかにも「五臓六腑」「経路」「表裏」「陰陽」「虚実」「寒熱」などの概念があります。

 

・経路とは?

経路とは、人間の体を巡っているツボとツボを結んだ線のことです。前述した「気」は経路にそって体を巡っています。例えば、更年期の女性が動悸、頭重、めまい、耳鳴りなど訴える場合、上半身の「のぼせ」状態であり「気の上衝」と言います。

 

・証とは何なのか?

漢方医学では「証」という言葉があります。これは患者さんの体の状態であり(体質・体力・抵抗力、症状など)、ライフスタイル、心理、社会的な状態をも含み、全体的に包括した考えです。私たちは生活習慣や環境、食べ物の好みなど全て異なっています。伝統的な東洋医学はその違いを大切にし、正しく「証」を診る(=診断する)ことになります。

 

・漢方医学のメリット

現代医学は病名や診断がつかないと治療ができません。また診断がついたとしても治療ができるとは限りません。例えば、風邪は誰でも診断することができますが本質的な治療法はなく、対処療法で喉の痛みや咳、くしゃみ、鼻水を抑えたりしているだけです。

その一方で漢方医学は患者さんの「証」が決まれば治療することができます。つまり、漢方医学的診断方法(気・血・水など)で証を決定し、患者さんの証が決まれば現代医学では治療が難しい病気や不定愁訴なども漢方薬で治療できます。

 

 

 

 

漢方薬とは?

漢方は、漢方医学的診断方法に基づいて患者さんを四診し、証を決定します。患者さんの証が決まれば、複数の生薬を組み合わせて作られた漢方薬を処方します。

四診とは、四つの方向から患者さんを診断する方法です。

望診 患者を観察すること(顔色、姿勢、舌の色など=視診)

聞診 声の調子を聞いたり、においや味をみること

問診 現代医学の問診と同じ(病気の症状、病気の既往歴などを聞く)

切診 患者の身体に触れること=触診

 

 

・漢方薬を用いた治療法

患者さんの証に従って漢方薬を処方し、治療します。治療の原則として大きすぎるものは取り(瀉)、不足しているものは補い(補)バランスをとります。

→「補・瀉」という考え方。バランスを取り、身体を正常な状態に戻します

 

漢方薬の治療の本質は養生にあります。

ストレス、食事、アルコール、たばこ、睡眠など自己のライフスタイルを見直し、リラクゼーションを大切にします。

漢方には未病(みびょう)という考え方があります。これは検査をしても原因が分からず、病気というほどではないが体調が悪く不健康な状態のことを指します。漢方医学は養生を通して未病を治すことにつながります。

 

 

・漢方薬の用い方と副作用

漢方薬は1日2~3回、食前または食間にお湯で服用します。

→空腹時のほうが吸収されやすく、より効果があるため

 

2週間を目安にして服用します。症状が改善しない場合は医師や薬剤師に相談しましょう。

漢方薬は副作用がないと思われがちですが、以下のものは注意が必要です。

 

・甘草(かんぞう)血圧上昇、低カリウム血症、むくみなど

・麻黄(まおう)食欲不振、多汗、不眠、動悸など

・大黄(だいおう)腹痛、下痢、食欲不振など

・附子(ぶし)熱感、ほてり、発汗、しびれなど

 

漢方薬は医薬品に比べて副作用が少ないですが、どんな薬でも薬効があれば同時に副作用があります。

また、患者さんの証を取り違えて使用すると下痢や食欲低下、発疹、めまいが起こることもあります。

漢方薬服用後、副作用と思われる症状が出たらすぐに服用を中止し、医師や薬剤師に相談しましょう。

 

 

 

漢方薬の種類

漢方薬には顆粒剤、錠剤、エキス剤などのほかに、生の生薬を自分で煎じて(煮て)服用します。

健康保険適用の漢方薬はほとんどがエキス剤です。

エキス製剤は複数の生薬を決まった割合で組み合わせて大量生産されたものです。

店頭で販売されている一般用医薬品/市販薬と医療機関で処方される漢方薬は、生薬成分が同じです。

しかし、一般用の漢方薬は安全性を考慮して成分量が少なくなっています。

生の生薬は保険の制約がないため、患者さんにとって必な種類の生薬を必要な分量だけ配合することが可能です。

 

 

・漢方薬に配合されている生薬と民間薬の違い

漢方薬の材料となる生薬は、天然の植物、動物、鉱物などを原料としています。

民間薬とは違い、漢方薬は2種類以上の生薬を組み合わせています。

民間薬も生薬を使用している伝承的な薬ですが、多くが1種類の生薬で用法・用量など規定がありません。

 

 

・虚実とは?

虚実とは、その人の体力や抵抗力の強さのことを表しています。

実証の人は元気にあふれ、食欲旺盛で体力があります。

虚証の人は元気がなく、疲れやすくて体力がありません。

実でも虚でもない人のことを虚実間証といいます。

 

 

・常備しておきたい漢方薬(一例)

漢方薬名   適応症
葛根湯(かっこんとう) 実証 風邪、鼻風邪、悪寒、発熱、頭痛、肩こりなど
麻黄湯(まおうとう) 実証 風邪、初期のインフルエンザ、気管支炎など
小青竜頭(しょうせいりゅうとう) 虚実間証 鼻炎、気管支炎、気管支喘息など
麦門冬湯(ばくもんどうとう) 虚実間証 咳、痰、気管支炎、気管支喘息など
五苓散(ごれいさん) 虚実不問 二日酔い、急性胃腸炎、腹痛、下痢など
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) 虚実間証 精神不安、神経性胃炎、めまいなど
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 虚証 貧血、冷え、月経不順、月経痛など
補中益気湯(ほちゅうえつきとう) 虚証 疲労感、食欲不振、虚弱体質など

 

 

まとめ

漢方薬の基礎知識について解説しました。漢方薬での治療は、証が合えば服薬中に食欲が出たり、よく眠れるようになったりして治療効果が出ます。そのためにも信頼できる医師や薬剤師、薬局、薬店で購入することをおすすめします。しかし、漢方薬はオールマイティな薬ではありません。漢方療法は本来、体の免疫力を高めて病気の下地ができないようにすることです。そのため、体の症状や病気によっては西洋医学の力や医薬品が必要な場合があることを念頭に置いておきましょう。

 

 

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