薬草を使った治療の歴史―現代医学と代替療法

古代人は植物や動物、鉱物などを薬として用い、治療を行っていたという記述が残されています。薬の歴史は古代文明の頃から脈々と現在にまで受け継がれて今もなお使われています。現代医学の医薬品は、薬用植物に含まれている有効成分を取りだし、その成分と同じものを人工的に合成して医薬品を作りました。しかし、薬は効き目が高い反面、有害な副作用もあります。

そのため最近では、現代医学の治療法以外にも植物療法(ハーブ、漢方薬、アロマテラピー等)をはじめ、免疫力を高め自然治癒力を向上させる代替療法(西洋医学以外の療法)が注目されています。それらの中には医療や治療として確立されていないものもあり、治療効果の検証は十分ではないかも知れません。しかし、薬草(メディカルハーブ)は近代医学(薬)のルーツであり、効き目は緩やかですが薬効効果があります。病気の予防や健康のために植物の力や代替療法を生活に取り入れてみたい人に向けて、欧米のメディカルハーブを中心に書いていきます。

医学の礎と発達

古代ギリシャの自然哲学者エンペドクレスは、この世の生命(物質)は「風、火、土、水」の四元素から構成されるという四元素説を提唱しました。アリストテレスもこの元素論の思想を引き継ぎ、この思想は医学の父と称されるヒポクラテスの四体液説と関連づけられました。この理論は、病気とは自然に発生するものであり超自然的な力(迷信・呪術)や神々の劫罰ではないという考え方で、医学や薬学だけでなく、哲学、神学、錬金術、科学などにも多大な影響を与えました。

 

・古代ギリシャ ヒポクラテスの四体液説

風→血液 火→黄胆汁 土→黒胆汁 水→粘液(四元素が各々四体液に関連している)

 

四体液説は四元素の影響を受け、人間は「血液、黄胆汁、黒胆汁、粘液」から構成されているという理論であり、この体液は健康状態を表す指標にもなっています。最も健康な状態とはこの四つの体液がバランスのとれた状態であると考えられていました。ヒポクラテスは人間に備わっている自然治癒力を引き出し、四体液の調和を保つという概念を土台にして医学としての礎を築き上げました。

ヒポクラテスは治療に300以上もの植物を用いたとされています。カモマイル、シナモン、ニンニク、ローズマリーなどは今でも私たちにとって身近な植物です。

 

ローマ医学と薬草

ローマ帝国時代のローマ医学は、ヒポクラテスの治療法と超自然的な力によるものとが混在していました。しかし、ローマの医師ディオスコリデスは600種の植物、1000項目の薬物を掲載した『マテリア・メディカ』の著者であり、薬学の祖と言われています。これはハーブ関連の書物で、症状別に薬草の利用法が記されていました。この中には、痛み止めアスピリンの原料とされていたシロヤナギ (white willow) を用いることが詳述されています。

 

中世時代とイスラム医学

ローマ帝国滅亡後のヨーロッパでは、人間が病気にかかると民間療法や習慣的儀式、魔術などに傾倒していました。しかしこのとき、ギリシャ医学の伝統を引き継いだのがイスラム帝国で、医学に傾倒していたペルシャの哲学者イブン・シーナが医学の百科事典『医学典範』を著し、これが西洋に伝えられました。また、彼は精油の蒸留法を確立して治療に活用し、現在のアロマテラピーの原形となりました。このような中世ヨーロッパ時代において修道院だけは例外で、薬草中心の僧院医学が根強く残っていました。

 

ハーバリストの誕生

16世紀に入ると、イブン・シーナ等が遺した書物から医学を継承したハーバリストがイギリスで誕生しました。ジョン・ジェラードはロンドン・ホルボーンに薬草園を開園し、『本草あるいは一般の植物誌』を著しました。そのほかにもチャールズ1世に仕えたジョン・パーキンソン『広範囲の本草学書』、ニコラス・カルペッパー『”the English Physicians”』など植物に関する本が多く出版されました。

 

19~20世紀の西洋医学

19世紀には、ドイツ人のサミュエル・ハーンマン医師が同種療法(ホメオパシー)を発見しました。これは患者の病気や症状を起こしうる物質と同じものを少量注入して、その病気や症状を治療する方法で、体の自己防衛機能を刺激して病気への抵抗力をつけます。

19世紀初頭までは植物による治療が中心でしたが、その後、メドースイート(西洋ナツユキソウ)というハーブから抗炎症作用や鎮痛作用のある成分が分離されたのをきっかけに近代医学が大きく変化していきました。例えば、コカの葉からコカインが分離し、麻酔薬が誕生しました。

20世紀になると、1928年にイギリスのアレクサンダー・フレミング博士によって世界初の抗生物質ペニシリンが発見されました。このようにして、医学の中心は植物中心のメディカルハーブから現代の医薬品に変貌を遂げて行きました。

 

現代医学と代替療法

古代から脈々と受け継がれてきた薬草中心の医学は、近代医学の発達により衰退してしまったのでしょうか。現在主流の現代医学は合成された医薬品を用いて治療しますが、効果の高い反面、副作用もあり有害な面が危惧されています。そのため、自然療法が見直され、代替療法として現代医学と融合する統合医療の試みが始まりました。

 

まとめ

古代から伝わる伝統的な植物や薬草を用いた自然療法は近代医学の発達とともに医学の中心の座を取って代わられました。長い薬の歴史からすると、ペニシリンが発見されたのは割と最近のことなんですね。多くの患者を感染症から救った功績は大きいですが、現代医学は賛否両論あり、最近では植物や薬草が見直されています。それらは代替療法として現代医学と融合し、統合医療への目覚めとなりました。

 

 

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・WEBライター(美容健康・英語・旅行・音楽等)

・アロマ/フィトセラピー アドバイザー

       

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