【植物療法リサーチャーが教える】不安解消法 ラベンダーには30~50%の鎮静成分

目まぐるしく人や物、情報が飛び交い、時間に追われ、心配事や不安、イライラ、ストレスで私たちの心や体は疲弊しています。ストレスや暴飲暴食が原因で胃が痛くなったら胃薬といったように、現代医学(医薬品)は病気になったとき体に現れた症状を治療します。しかし、これらの根本の原因である心の状態を治すわけではありません。

代替療法では、病気になる前に日常生活を正し病気を予防することに重点を置き、不安やストレスなど心の状態にアプローチします。代替療法の中でもアロマテラピーは植物や果実などから抽出した天然のエッセンシャルオイル(精油)を用い、芳香物質が心身へ作用します。

一般的にアロマテラピーは香りを楽しむものだと思われがちですが、フランスでは精油を服用し医療に取り入れられています。

精油の中でもラベンダーはフローラル系の柔らかくさわやかな花の香りで鎮痛、鎮静作用などの効果が高いと言われています。ストレスフルな毎日を送っている方にラベンダーの驚くべき作用をご紹介します。

 

 

アロマテラピーとは

アロマテラピーとは植物から抽出した精油を用い、心や体へ作用する芳香成分を利用した自然療法の一種です。精油を用いた利用法は香りを楽しむ芳香浴のほかにもさまざまな方法があります。

  • 芳香浴法:キャンドルやディフューザーで精油成分を室内に拡散させ香りを楽しむ
  • 沐浴法:浴槽などに精油を利用し皮膚や湯気の吸入によって精油成分を取り込む
  • 吸入法:洗面器やマグカップに熱いお湯と精油を入れて香りの湯気を吸い込む
  • 湿布法:洗面器に水(又は適温の湯)と精油を入れタオルや布に含ませ、部位に湿布
  • トリートメント法(非医療行為):精油を使用したトリートメントオイルでマッサージ

 

エッセンシャルオイルについて

エッセンシャルオイルは、植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した天然の芳香物質です。植物が作り出した有機化合物の集まりで、天然の化学物質が構造や働きによっていくつかのグループに分類されています。精油は植物の種類によって特有の香りと働きを持っています。

 

エッセンシャルオイルの分類

自律神経系

・リラックス効果(ラベンダー、ローマンカモミール、フランキンセンスなど)

・リフレッシュ効果(ペパーミント、レモン、ベルガモットなど)

 

内分泌系

・ホルモン分泌調整(ジャスミン、ローズ、ゼラニウムなど)

・消化酵素分泌調整(スイートオレンジ、レモングラス、スイートフェンネルなど)

 

免疫系

・免疫力調整(ティートリー、ラベンダー、ユーカリなど)

 

エッセンシャルオイルと香りの作用

精油にはさまざまな成分が含まれています。芳香成分が鼻の奥の上部にある嗅上皮の粘膜に付着し、そこにある嗅細胞から出ている嗅毛が成分をキャッチして電気信号(インパルス)に変換し嗅神経を介して大脳辺縁系へ伝わります。

脳の中で大脳辺縁系は、食欲や性欲、怒りや恐れ、快不快などの情動、記憶など人間の本能的な欲求や情動を司っています。

大脳辺縁系は、嗅球、嗅索、扁桃体、海馬から成っています。例えば、外部からの刺激を受けると情動反応を起こす扁桃体、記憶を貯蔵・管理する海馬などが働きます。精油は人間の本能的な行動と結びついている大脳辺縁系へ直接伝わるため、大脳新皮質(知性や理性を司る)からの認識を待たずに直接的に身体調節に関わっています。

精油の香りは鼻から大脳辺縁系へ伝わり、自律神経をコントロールしている視床下部脳下垂体へ伝達します。脳下垂体は、自律神経系・内分泌系・免疫系の各方面に働きかけ、香りのメッセージが伝わるとそれに応じた分泌作用が生じます。例えば、ラベンダーの心地良い香りを嗅ぐことは大脳辺縁系に働きかけ、セロトニンという生理活性物質が分泌されます。そのため、自律神経を整えリラックス効果があります。

 

 

ラベンダーの薬理作用

精油は数多くの有機化合物の集まりのため、さまざまな薬理作用があります。ラベンダーは優れた鎮痛・鎮静作用、抗菌作用のほかにも火傷の痛みをすぐ取り去り皮膚の修復を助ける働き、筋肉痛、感染症にも有効です。

 

Lavender ラベンダー(シソ科)

学名:Lavandula angustifolia

産地:フランス、イギリス、イタリア、ブルガリア、日本、オーストラリア

抽出部位:葉と花

抽出方法:水蒸気蒸留法

成分:酢酸リナリル(30~50%)、リナロール(25~35%)など

鎮痛・鎮静作用(酢酸リナリル)

鎮痙・抗菌作用(リナロール)

 

 

ラベンダーの臨床試験

平均年齢51才の女性グループ(ラベンダー群)と平均年齢48才の女性グループ(対照群)、 合計80人を対象にしてラベンダーの抗不安作用の有効性を評価するための無作為化対照試験を行った。被験者は乳房手術の当日の朝、ラベンダーオイル3~4滴(0.1mL/drop)をガーゼに滴下し20分間吸入法を行った。

ベースライン(治療開始前)ではグループ間における不安レベルに関して統計的に有意差は見られませんでした。その後、ラベンダー群はベースライン時と比べて不安感が有意に改善されましたが、対照群では改善が見られませんでした。

試験の結果:ラベンダー群も対照群もベースラインでは同レベルの不安感を持っていましたが、その後、ラベンダー群のみ不安レベルが減少しました。この結果からアロマテラピー(ラベンダーの精油)が不安感を和らげることができると裏付けました。

考察:evidence-based studies(根拠に基づく試験)ではなかったものの、ラベンダーの香りが精神的な不安やストレスを軽減する有効性が臨床試験で裏付けられたので、ラベンダーの香りの効果が期待されます。今後、医療現場で患者の不安感を減らすためにアロマテラピーが普及することを望んでいます。

[今回の論文]

Beyliklioğlu A, Arslan S. Effect of lavender oil on the anxiety of patients before breast surgery. J Perianesth Nurs. June 2019;34(3):587-593. doi: 10.1016/j.jopan.2018.10.002.

 

まとめ

現代はストレス社会と言われています。複雑な人間関係、環境の変化、仕事、インターネットなどが要因で不安やストレス、怒り、イライラ、憂鬱など心と体に影響を及ぼしています。ストレスをすべて取り除くことは難しいですが、ストレスへの適応力を身につけ、アロマテラピーなどを利用してリラクゼーションを心がけるようにしましょう。ラベンダーの香りは不安やストレス軽減に有効性があると言われています。

 

 

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・WEBライター(美容健康・英語・旅行・音楽等)

・アロマ/フィトセラピー アドバイザー

 

 

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